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そういった不安を、大男は感じ取ったようだった。ぶっきらぼうなのは変わらないが、どことなく気遣うような視線。
「案ずるな。すぐに発つ。用事が終わればな」
男は扉代わりのむしろをくぐり、一跨ぎで母親の寝床の前に立った。
「女。この近くに社はあるか」
母親は何事かと身を起こして、自身を覆う影が真横の巨体からくることに気づく。しばらく呆気にとられるが、傷んだ身を振るってどうにか正座する。
「畏くも高天原に座しますお方が、このようなあばら家にお越し下さるとは、勿体ないことでございます」
「社を探しに来た。知っているか」
母は瞳孔を斜め上にさ迷わせて、やがて瑞穂へ目をくれた。
「瑞穂や、そこの水瓶をどけてごらんなさい」
ゆびさしたのは入り口の近くに置かれた大型の土器である。二人で使うには大きすぎると放って置いたままになっていた。
少女の胸ほどまであるが、中身は無い。動かすのは難しいことではなかった。
違和感に気づく。底が高い。本来地面に接するだろう底面は、容器の拳一つ分ほどの高くなり、下に空間があった。
中には砕けた仮面と、色鮮やかな生き物の絵。鋭い口を備え、腕には扁平な毛のようなものが生えている。
「なにこれ?」
「鳥よ」
「とり?」
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