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瑞穂の眼は確かだった。米粒にまみれながら大の字に寝そべるのは、見たことも無いほどの大男。一瞬、彩色された石像かと見紛うほどの、太く隆々とした体つき。子供とは言え、図体が瑞穂の倍近くある。
岩盤からの出水を思わせる、長く乱雑に伸びた黒髪が、米の山と男との境界をはっきりさせていた。
ぴくりとも動かない。当たり前だ。あの高さからまともに落着して、原型がある方が不思議であろう。普通ならはたかれた蚊のようになっているはずだ。
恐る恐る近づく。逃げ出さなかったのは、道端にある妙なものを棒で突っつかざるを得ない、子供特有の感性からであったか。
あと一歩で手が届く、という所で、男の眼が開いた。
「わひゃっ!」
飛び下がる少女。蛇の如くむくりと頭をもたげると、大男は瑞穂の方を向いた。
「……此処は、根の国の何処か」
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