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けたたましい鳥類の鳴き声が洞窟内に木霊する。危機を知らせる警報だが、瑞穂が今まで聞いた中でも一等甲高い。百里先まで反響しそうな叫声であった。
大音響を叩きつけられた生き物の本能で固まる小娘を、大男が小脇に抱え込んだ。
「わひゃ!?」
「離れるぞ!家に案内しろ!」
男が初めて声を荒げた。あまりの迫力に、応えてしまう。
「は、はいい!まじゅ、みぎ、へ!」
「右の大路だな!」
鉄砲水に揉まれるかのような速さと揺れ。男はまさに激流だった。警報に騒然となる人混みを烈風が駆け抜ける。
誰一人人影に気づくどころか、風の来た所も行く先も知らず。蓬髪はたなびきながら無明へと吸い込まれる。
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