二話 凄ノ男

3/3
前へ
/12ページ
次へ
けたたましい鳥類の鳴き声が洞窟内に木霊する。危機を知らせる警報だが、瑞穂が今まで聞いた中でも一等甲高い。百里先まで反響しそうな叫声であった。 大音響を叩きつけられた生き物の本能で固まる小娘を、大男が小脇に抱え込んだ。 「わひゃ!?」 「離れるぞ!家に案内しろ!」 男が初めて声を荒げた。あまりの迫力に、応えてしまう。 「は、はいい!まじゅ、みぎ、へ!」 「右の大路だな!」 鉄砲水に揉まれるかのような速さと揺れ。男はまさに激流だった。警報に騒然となる人混みを烈風が駆け抜ける。 誰一人人影に気づくどころか、風の来た所も行く先も知らず。蓬髪はたなびきながら無明へと吸い込まれる。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加