第十四章

12/13
125人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
 少しの間があって、楓が尋ねた。 「実際のところ、殺人未遂での起訴は難しいんだろう?」 「まあ、現実的じゃないな。送検もしないんじゃないかな」 「だろうな。計画しただけで殺人未遂が成立するような世の中はダメじゃ!って声が聞こえてきそうだ」 「言われたよ。バカモン! と一緒に」 「ははは」 「本人が反省して背負って生きていくんなら、まあそれでいいという場合もあるさ。それにしても...明彦が何故自殺したのかは、依然 謎のままなんだよな」 「先生は、なんて言ってた?」 「おぬしには、わかるまで100年かかる」 「はははははは」 「笑い事じゃないぞ」 「実は、俺も聞いたんだよ。俺は死んでもわからないって言われた」 「ぶっはっは、俺より悪いじゃないか」 「そういうのは、目くそ鼻くそっていうんだ」 「はは、まあそうだな。俺が100年でお前が死んでも..って..なんだ?」 「ふふふ、先生、失恋でもしたんじゃないか?」 「ええ?」 「だって、俺とお前、と言えば朴念仁(ぼくねんじん)で有名だったらしいからな」 「そうなのか?」 「そうさ、俺達には『恋人』なんじゃないかって噂さえあったらしい」 「いやいや、それは困る」 「俺だって困る、ははは」 「でも、先生が失恋って、ふはは、それはないだろう、あの人が恋するとしたらブラッディ・メアリーとか?..あ、ベル・ガネスだと行方不明だから先生好みかもしれないな」 「ははははははは、それはあり得る」
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!