第二章

1/21
前へ
/185ページ
次へ

第二章

 多摩署には、既に大会議室に捜査本部の準備が整っていた。 そこへ、本部の捜査員たちが続々と到着してきている。 そして、最後に沢泉が乗った車が柿崎の運転で到着した。  署長以下幹部が出迎える。 「いやあ、本部の手を(わずら)わせて申し訳ありません」 署長が儀礼的な言葉を述べる。 「いえ、本部でも所轄でも事件を早急(さっきゅう)に解決できればいいのです。そのためには力を惜しみません。どうぞ、よろしくお願いします」 沢泉は生真面目に返答する。  沢泉が入った時、大会議室には既に本部 所轄合わせて50名ほどの捜査員が揃っていた。  捜査本部長は、形式的ではあるが、所轄の多摩署長が務めることになる。 その本部長の挨拶が終了すると、管理官である沢泉の紹介に続いて挨拶を求められた。 「私は現場経験もない、新人の管理官です。しかし 事件を解決したいという思いはみなさんと同じです。事件を解決するのに階級みたいなものは関係ありません。どうぞ、意見や考えなど 遠慮なく言ってください。よろしくお願いします」 大会議室全体が、ちょっと唖然(あぜん)とした空気に包まれた。 新任とはいえ 管理官であり バリバリのキャリアが、こんな謙虚な挨拶をすることはごく稀であろう。 沢泉は自分が何かおかしなことを言ったのか と 思わず、少し離れたところに控えていた柿崎を見た。柿崎は笑顔で軽くうなづいたのだった。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

126人が本棚に入れています
本棚に追加