第一章

2/9
125人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
「そうなのか」 合田は、明らかな失望の色を顔にだし、しかし すぐに元の柔和な顔に戻すと 「まあ、疎遠になっているとは言え、最初の教え子だし、せっかく警察で捜査を指揮する立場になったんだ。これを機会に先生と復縁するのもいいと思うよ」 「はあ、考えておきます」 (復縁って、夫婦じゃないだろう) (結局、そういうことか、神宮路先生とのパイプ役なんだな、俺は。しかしそのパイプが断裂(だんれつ)しているとは知らないらしい) 合田の部屋から戻る途中、そんなことを考えていた。  管理官は、担当事件を解決に導くのが仕事である。  迅速に解決するためであれば、上司部下同僚、場合によっては外部の専門家に相談することはやぶさかではない。 神宮路とも普通の教授と教え子の関係を保っていれば、困ったときには、最も頼りになる、相談相手であることもわかっている。 (しかしなぁ)  沢泉は、苦い顔で自室に向かった。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!