第一章

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 警察組織も一般的な役所と同じで通常は内部昇格は あまりない。  昇進した捜査員は、別の所轄署なり部署なりに移動する。 巡査部長だと、所轄であれば主任クラスの役がつく。本部だと役はつかないのが普通だ。  柿崎はまだ若い。二十代後半か三十代前半。それくらいで巡査部長に昇進するものも珍しくはないが、柿崎は女性である。男女平等とは言え、元々が男社会の警察組織である。自分より年上の男の方がはるかに多い職場では、移動するにしても部署が少ないのだ。  そこで、新任のキャリア管理官の補佐役として本部勤務にして、時間を稼ぎつつ(はく)を付けようという人事の算段ではないかと沢泉は考えたのだ。  国家公務員で全国一区で移動があるキャリアであれば、海外研修や地方の警察署の課長クラスなど、箔を着ける方法はいくつかあるのだが、地方公務員である柿崎にはそういう手法は使えない。よって、ここに着任したのだろう。 (手柄欲しさに先走ったりしないだろうな) ちらっと柿崎の方を見た。彼女は真剣に机上のPC端末を見ている。事件の詳細を読んでいるようだ。 (まあ、気にしてもしょうがないか)  沢泉は、早速 初めて担当する事件の詳細資料を読むことにした。
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