第五章

2/20
125人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
 沢泉から電話を受けた科捜研の担当課長は消極的だった。 「管理官、お気持ちはわかりますが、これ以上は難しいですよ。 試薬もただじゃないんですし」 と つい本音もでていた。  そこで 沢泉は、神宮路の「指令」から推測した事実から逆算した... とっておきの情報を提供した。 「そんなに一から順番に調べなくっていいんだ。私はあまり詳しくはないんで専門家に聞くしかないんだが...  長期でも短期でも使えて大量に使うと多臓器不全を起こすような、それでいて、比較的入手が簡単なもの...なんていうのはないかな?」 「はあ、そうなると、やっぱりヒ素あたりでしょうかね」 さすが、毒物の専門家である。すっと出てくる。 「そうなのか?ヒ素が条件にあてはまるのか?さすがだね」 「いえ、まあ、そうですねぇ。しかし、今どきヒ素を使って殺人とか、ないでしょう。殺人事件ですよね?何年か前に夫の食事にヒ素を混ぜて殺した女がいましたが、すぐにバレましたね。カレーに入れるようなサイコはいるかもしれませんがね」 (夫を次々と殺したってやつか) 数年前にマスコミが大騒ぎした事件だ。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!