第五章

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 果たして...  一時間もしないうちに 科捜研の担当課長から捜査本部の沢泉に電話がかかってきて、 「でましたよ!管理官!でました、ヒ素がでました」 興奮気味に報告してきたのである。 「おお、出たか。やはり君の推測が大当たりだったね。お手柄だ」 「え?いえ、え?私の?ですか?」 「ああ、そうだよ。ありがとう。報告書を頼むよ」 「はい!失礼します」 (よし、思った通りだ) 沢泉は、真実に一歩近づいた感触を得た。  神宮路は、「犬の死因を調べろ」と言った。「覚せい剤かどうかではない」とも言った。既に犬の死因が覚せい剤ではないことを予期していたかのようである。 それは、『犬の突然死と殺人事件は関係はあるが、使用された毒物は違うものである』 ということではないか? と沢泉は考えた。  犯人は犬で実験をした。しかし、犬の体重に対するヒ素の割合が多すぎた。予想をはるかに超える、激しい死に方をししてしまった。 そこで犯人は、本番では違う毒物を使った。  よほど毒物に関する知識がなかった、と考えれば 一応の辻褄(つじつま)は合う。
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