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車の中で、タブレット端末を出して 沢泉が資料を読もうとしていると、
「管理官、捜査本部で挨拶があると思いますので、考えておいてください」
と、柿崎が運転をしながら言った。
「挨拶?そんなことするのか?」
「はい、必ずというものでもないのでしょうが、慣例的に あると思います」
「何を言えばいいんだ?」
「私も捜査本部での管理官の挨拶を聞いたのは、1回しかありませんが...」
少し考えて、
「新任であること。事件解決に強い意欲があること。後は、みんなを鼓舞するような...俺についてこい!的な?」
「はあ?なんだそれは」
バックミラーを見ると、柿崎は自分で言っておいて、ちょっと呆れたような顔をしている。
「そんなものですよ」
「そういう挨拶は得意じゃない。なんとか自分で考える」
沢泉は、まるで「結婚式の挨拶を頼まれた友人」のようにブツブツ言い始めた。
「管理官」
「うん?」
「まさかとは思いますが」
「なんだ?」
「ただ今ご指名いただきましたので、って言っちゃダメですよ」
「え?...」
どうやら、ブツブツ言ってたのが聞こえていたらしい。
柿崎は耳がひどく良いようだ。
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