私の彼氏。

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 さて、そんなおセンチな気分になりつつも行きつけの居酒屋に行こうとした私たちだが、今日は新刊の発売日だということに気がついた私たちは本屋さんによることにした。もちろん、オタク御用達のあの青い袋が目印の、アニメグッズも売っている本屋さんだ。 「ヤッフー! たくさん本があるところを見ると、なんだか興奮するよね」 「頼むからそのテンションを抑えてくれ。同類だと思われたくない」   立ち並ぶ新刊たちに心を震わせていると、お隣からため息交じりの声が聞こえてきた。「同類と思われたくない」とか、かなり酷くない? まぁ、言いたいことはわかるけれど。  そう、このテンションは若干ながら「わざと」である。わたしはこの場で、ライトなものだけど「同性愛」の新刊を買おうとしているのだ。つまりは、この場でわたしが「同性愛」が好きなオタクであることをバラそうとしているのだ。  だから心臓はバクバクだし、こうやってバカやっていないと今にも逃げ出したくなってしまいそうなくらいには緊張している。今だって、他のレーベルの新刊を取る手が少し震えているし。  お互いに好きな新刊なんかを物色するために、今は別行動をしている。それでレジ前らへんで合流して、そのまま会計をするのがいつもの流れだ。  合流する前に見られたくない本は、エロ本を買う男子高生みたいに「サンド」して相手に見られないようにしてたりしていたが、今回は真上に持ってきて、しかも表紙が見えるようにして置く。  名付けて「私、こんな本も買うのよ。大作戦」だ。  いや、そのまますぎてダサすぎるな。この作戦名。語呂も悪すぎるし。
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