雨の日の殺人鬼

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雨の日の殺人鬼

 かんかんという釘を打つ音で目が覚めた。 「おはようございます。近くで工事でもしているんですか?」 「おはよう。あれは神父様の趣味の大工よ。黒猫の小屋を作るんですって。先週はトラ猫だったから」  はは、と乾き気味の笑いが漏れる。 「犬小屋でも作ったら良いのに」  くすりと笑ったのは彼女だ。 「もう作ってるのよ。ハスキーとマルチーズと、チワワとプードル……後はなんだったかしら」  そう言いながら彼女は器用に刺繍をしていた。彼女の部屋にはたくさんの編み物や裁縫で作ったものがある。今度のバザーで売ると言っていた。趣味があるのはとても良いと思う。自分の手で何か生み出せるのはなおのこと。スープを温め直しながら料理でも始めようかとぼやいた。 「あら、素敵ね。何か必要なものがあったら買ってくるわ」 「あ、いや、そんな大層なものじゃないです。ただ、美味しいものが作れたら楽しいなぁって」 「私も嬉しいわ。美味しいものが食べれるなら。応援する!」  顔を見合わせて2人でちょっとだけ笑った。  外で大工をしている神父様を見に行った。青空の下で木の板に釘を刺してかんかん打ち、汗をかいている。  そして何が楽しいのか分からないが小屋を大量に作っている。何の小屋であるかと聞けば嬉々としてかたってくれた。 「これは鳩用でこれは雀でこれはインコ、コウモリ、カラス、オウム……」  それからも彼は使われずに溜まっていく小屋を作り続けている。 「イエス様は十字架にはりつけられて死んだんですよね。手に釘を打たれて」 「それはそれこれはこれ。後、イエス様は元々大工だったからいいんだよ。同じことしてる」  かんかんと。彼は何が面白いのか釘を打つ。 「ははは、好きだなぁ」 「ん? 何が?」 「あなたが」 「それは嬉しいな。私も好きだよ、君のことも彼女のこともこの街もね」  一緒に居ればいるほど彼らのことを好きになった。 「そういえば料理を始めようかと思って」 「それはいいね。美味しいものが食べれるなら大歓迎だ」  彼の顔を見てみると笑っていたので僕もつられて笑った。
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