雨の日の殺人鬼

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雨の日の殺人鬼

 料理を始めた。料理自体は簡単な行為でも美味しく作るには手間暇がかかるようだ。 「私たちが作るよりは余程美味しいわ」  お世辞にもまだ上手いと言えない料理に対して彼女たちはそう言う。もっと上手く作れるようになりたいと思った。 「神父様、彼が死んでしまってからどうしても悲観的になってしまうのです。私も彼の後を追えたらどれほどいいかって……いけないことだとわかっています。でも、私、どうしたらいいんでしょうか……」  今日の料理について相談しようと神父様を探している時だった。神父様は街の人の話を聞いていたらしい。  僕が聞いていい話ではないとその場を立ち去ったがどうやら彼には見つかっていたらしい。 「私にはどうすることもできない。時間と、家族や友人といった周囲の人の支えが必要なんだろうな……」  後から重々しく彼がそう語った。 「こういう時はどうしても自分が無力だって思い知るよ……」  ぎゅうと胸が締め付けられるようだった。あの女性の悲しみははかりきれないだろう。それに胸を痛め、無力だと嘆く彼の姿にも辛くなった。  大切な人を亡くして本当に辛いのだろう。何かしてあげたい。助けてあげたい。ああ、そうだ。もう悲しまなくて済むように殺してしまえばいいじゃないか。  僕の料理の腕は日に日に上がっている。  教会にいるのだから豪勢な食事をとるわけにはいかない。だからこそ限られた食材でどれほどおいしいものが作れるかという勝負になる。  夕飯の反応を見る限り、今日も一日うまくいったらしい。明日の献立でも考えようと教会の中を歩いていると神父様をみつけた。 「神父様……えっ、お酒ですか?」  何をしているのかと近づいてみると、赤ワインとチーズが机におかれている。  お酒を飲む神父……その姿に驚いていると彼はなんてことはない素振りで口を開いた。 「違います。主の血だ」 「それってワインですよね?」 「そうだ。今年の美味しいやつだ」  あんまりにも堂々とした素振り。動揺している自分がおかしい気さえしてくる。
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