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前に一度、同じ事があった。耕哉がネットの動画を見て驚き悲鳴を上げ、椅子から転げ落ちたのだ。駆けつけ、ドアをノックすると中からばつが悪そうな耕哉の顔が覗いた。
何でもない。子供じゃないんだから、一々上に来なくても良いよ。
そりゃそうだけど……と和代はゆっくりと台所を出ると階段の下まで来た。
何か音が聞こえる。
しゅっしゅっしゅっと連続で聞こえるそれは、次第に間隔が短くそして甲高くなってゆく。と、ふっと後ろでまとめた髪がふわりと前に流れた。はっと目を見張ると、階段下の橙色の照明の中を、細かな埃がゆったりと流れてゆくのが見えた。
目で追う。
それは二階に上がってゆく。
二階に空気が流れてゆく。
窓がどこか開いて――
途端に足がよろけた。床がきしみ、壁に手をついて悲鳴を上げるが、それは轟音にかき消された。
ずずずずんっと腹に響く音が聞こえ始めた。
二階だ。
何かが起きている。和代はそう思うや、階段を這うように駆け上がった。その間も揺れと音はどんどん大きくなる。階段を登り切り、耕哉の部屋のドアがガタガタと震えているのが目に入る。
と、更に大きな揺れがきて和代は床に倒れ伏した。半開きになっているドアに四つん這いで辿りつくと、上半身をねじ込んだ。
「耕哉っ! 耕哉大丈夫!?」
椅子に座っていた耕哉が振り返った。
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