プロローグ:事件

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「うるっさいなあ。だから子供じゃないんだから一々、来なくてもいいってば……あれ、どうしたの? そんな所に寝っ転がって」 「え……」  和代は上半身を起こすと、耕哉をまじまじと見た。  ゾッと何かが背中を走り抜け、汗が吹き出す。  なにこれ? まさか。こんな。  ドア枠に捕まり立ち上がる。  こんな――耕哉は、こんな――  ……あら? 「……そろそろご飯だから下に降りてきたら?」  和代はそう言うと、ドアから離れて行った。耕哉は頷くと、椅子から立ち上がろうとして、よろけて膝をついた。  頭が少しふらふらする。眼精疲労ってやつかな。  耕哉はフローリングの床に転がったスマートフォンを見つめ、体を動かし、首を傾げた。その顔が曇る。  あれ? なんで通話モードになっているんだ?  あ、誰かと話して――いや、話してない、か? 最後の履歴は……昨日の母さんだしな。  和代は既に階段を降り始めた。その音を聞きながら、耕哉はしばらくじっとしていたが、やがて右手でスマートフォンを掴み上げ、左肩を壁に預けると、立ち上がり戸口に立った。  なんだろう、何かを忘れているような……  振り返った耕哉は、PCの電源が点けっぱなしなのに気がついた。  ……まあ、食べてからも少しネットをやるし、別にいいか。     
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