第2章 誰よりも理解してくれる人

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その後、わたしは同窓会での勇君との会話を何度も思い返してる。 勇君は主人より何倍もわたしのことを理解してくれているって思った。 主人はもともと既婚者だった。 奥さんがいる人だと知らずに付き合っていた。 それがわかった時、わたしはもてあそばれたのだと思って収拾がつかないほど感情が混乱した上に 、妊娠が発覚して……。 でも主人がそうせざるを得なかった事情を聞いて、きちんと奥さんとのことを清算して、わたしと結婚してくれた。 だからわたしのことを本当に大切にしてくれているのはわかるのだけど、 仕事人間でとにかく家にいない。 ろくに会話もない。 誕生日だけは取り繕うように祝ってくれる。 パターン化してきて感動しなくなった。 大切にされているけど、理解はされていない。 わたしの気持ちを知ろうとしてくれない。 与えられたのは、贅沢な暮らしと時間だ。 もし、ずっと勇君と付き合い続けていたら、今みたいな贅沢はできないけど、好きな仕事をして、誰かの役に立ってわたしらしく生きられたんじゃないかな? でも、時間を巻き戻すことはできないし、主人と別れて自由に生きる勇気も無いし、主人が嫌いなわけじゃない。主人なりにわたしを大切にしてくれているのはわかっている。 そこに想定外の勇君からの申し出。 勇君に浮気とか不倫とか下心があるわけがない。 彼はそんな器用な人じゃない。 ただ純粋にわたしの気持ちを汲み取って最善の提案をしてくれたんだ。 ……っと分析した。
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