僕の家出日記

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隣の家の猫には、その後も色々な事を教わった。 猫は、犬と違い自分で毛繕いをする事、爪を研ぐ事。 そして、猫らしい自由気ままな暮らしの楽しさなど、 その子の話す事はどれも知らない事ばかりで、 飽きる事はなかった。 中でもよく聞かされたのは、 「猫は死期が近づくと旅に出て、自らの死に場所を選ぶ事ができる」という話だった。 その子は、自分には理想の死に場所があるのだとよく口にしていた。 静かに寂しく死ぬのは好きじゃない。 時折子供の笑い声が聞こえるような賑やかな、 それでいて緑に囲まれた場所で死にたいのだと。 そしてその話をする度に、 「お前も自分の死に場所について考えておくといい」と言って、話を締めくくるのだった。
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