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カレーライス
お正月気分も抜けて、仕事内容も通常業務の繰り返しになった頃、私は休みをとって彼の部屋を訪ねていた。
とはいえ、彼は特別顧客の呉服展示会があり、一緒に休むことは叶わなかった。
氷室さんからの『チキンカレーが食べたい』とのリクエストに応えて、夕方から食材を買い込みキッチンに立っていた。
「カレーが食べたいんだって・・・ふふ。」
私は独り言を言いながら、笑いを堪えきれずにいた。
私がこの部屋に来るようになって、少しずつこのキッチンが様変わりしている。
お揃いのカップを買ってくれたのが始まり。
茶碗やお皿は2つずつ、大きさの違う鍋、ボールやザル、フライ返しやピーラーに至るまで買い揃えてくれた彼。
そのわりに、食べたいものを訊ねると「ハンバーグ」「オムライス」「カレー」ばかりで、肩透かしにあっているようだ。
せっかく調理器具をいろいろ買ったのに
カレーが食べたいんだなんて・・・
ふふっ、子供みたい・・・
氷室さんは全く料理をしない。
毎日の食事は、外食かスーパーの惣菜ですませていた。
お米を炊くことと、カップラーメンのお湯を沸かすこと以外はキッチンを使用しないそうで、だからこそ食べたいものを訊かれても頭にメニューが思い浮かばないと言う。
彼の喜ぶ顔を想像しながら、私はカレーとサラダを作り終え、相変わらず掃除が行き届いた部屋で一息ついた。
ソファの下のラグに座って白い壁に目をやり、少しぼんやりとする。
このお部屋、やっぱり落ち着く・・・
氷室さんがいなくても氷室さんを感じるし・・・
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