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「お帰りなさい、氷室さん。」
予想より早い時間に呼び出しのチャイムがなり、ドアを開けると氷室さんがニコニコとそこで待っていた。
「ただいま、ユリ。」
「早かったですね?本当に定時で終わったんですか・・・・わあっ!」
氷室さんは靴を脱ぐと、突然私を抱きしめた。
私の髪に顔をうめ、グリグリと擦り付ける彼。
「ユリが待ってるから、今日も死ぬ気で仕事を終わらせたんだよ。んー、ユリぃ。」
「・・・・はぁ。またビックリしちゃった。・・・絶対こうなるって、わかっていたのに。もう・・・。」
「ハハッ、こうなるって?」
氷室さんは腕を私の腰にまわしたまま、顔を覗くように首をかしげる。
その仕草があまりにも可愛くて、じっと彼の顔を見てしまう。
メガネの奥の瞳が細くなって、見えなくなるほどの笑顔。
1月の寒い空気の中、急ぎ足で帰ってきたことがわかるような、冷たい頬に赤くなった耳。
私はその頬に手を当てて、自分の温もりを彼に渡す。
そして、お互いの顔が近づく。
「早く、ユリに会いたかった・・・・。」
「私も・・・・・・・・・んっ。」
チュッと音をさせてキスをする。
唇が離れると、彼はニコッと笑って私を捕らえていた腕の力をゆるめる。
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