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グレープフルーツと昔話
「あと1ヶ月で
ユリちゃんがお嫁さんになるのかぁ・・・。」
母が夕食後にしみじみと言った。
父はお風呂に入っていて、母と二人だけでお茶を飲みながらお喋りをしていた時だった。
「お母さん、さびしーい?」
「それは・・・寂しい気持ちもあるけどね。それよりも嬉しい気持ちのほうが大きいよ。・・・小さかったユリちゃんが成長して、大人になって、大好きな人と一緒になるんだから、お母さんはほんっとに嬉しいよ。」
「そうなんだ・・・。」
今日は結婚式場を母と二人で訪れ、最終の衣装合わせや引き出物の確認などをしてきた。
他の細かな打ち合わせは、既に彼が忙しい仕事の合間に訪れていたらしく、ほとんど済ませてあった。
そのお陰で打ち合わせは早く終わり、久しぶりに母と水入らずで買い物をしたり、お茶をして楽しんだ一日だった。
「ユリちゃん、本当にお色直しは1回でいいの?可愛いドレスがいっぱいあったのに、あの1着だけでいいの?」
「いいの、いいの。来てくれた人をお色直しの間待たせるのも悪いし、ドレスはあのドレスだけがいいのよ。」
「そうかぁ、氷室さんが選んだドレスだもんね。」
「ふふ、そうなの。」
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