永遠のリング

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今日は勤務しているデパートへ、二人で買い物に訪れる予定でいた。 宝石売り場で『結婚指輪』を買うために。 外商係員として宝石売り場と関わりがある氷室さんが、私へ贈るためのエンゲージリングを買ったのは昨年末のこと。 それ以来、売場責任者の泉さんから「結婚指輪も絶対気に入るのを探すから任せて」と言われ続けていたらしい。 デパートの正面玄関からはいり、エスカレーターで目的の階まで上がる。 途中、何人かの社員に会い、興味津々なようすで目で追われた。 「いらっしゃい。お待ちしてました。」 「泉さん、お世話になります。」 責任者の泉さんが、笑顔で私達を出迎えてくれた。 氷室さんの後ろから、私も会釈して挨拶した。 「結婚指輪はこちらです、どうぞ。」 通された奥のショーケースには、たくさんの結婚指輪が陳列されている。 「・・・・きれい。」 「ん、そうだね。どれでも、ユリの好きなものを選びなさい?」 「はい。でもこれだけあると迷いますね。・・・あ。」 「どうした?」 泉さんの後ろに人影をみつけた、視線を送る女性。 以前、氷室さんが2位になった四半期表彰式で、彼に好意を寄せていると言っていた、あの可愛らしい派遣社員だった。 彼女は、するどい目つきでこちらを睨んでいる。 背中に寒気がはしるほどだった・・・
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