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彼は外商部でも一般顧客対象の3課に所属している。
自然と日々の移動距離は長いし、残業も多い。
中元や歳暮の時期になると、その忙しさ故に体を壊す人さえいる。
それを知っているからこそ・・・
彼を支えたいけど・・・
今の私では支えられる余裕はない・・・
それを悟ったのか、氷室さんはテレビに顔を向けながら時々視線だけ私へおくって、話し始めた。
「俺は今までも1人でやってきたから、ユリが仕事で忙しくても自分のことは何とかなる。」
「氷室さん・・・・」
「だから、俺のことは心配するな。」
「・・・・・。」
「今のユリは、ユリにしかできない仕事をしてるだろ?社内でも、みんなおまえを認めてる。」
「・・・・・・・。」
「それはユリが、人事って特殊な場所で地道に仕事を続けた上の評価だ。」
「・・・・・・はい。」
「だから正直な俺の気持ちは、結婚しても仕事を続けて欲しいけど?・・・辞めるのはもったいない。せっかくユリがのこしたキャリアだもんな。・・・でも潔く辞めるなら、それでもよし。」
「・・・・ありがとうございます。」
「仕事と家庭の両立なんて、考えんなよ。要はユリが続けたいか、続けたくないか、だけだぞ。どっちにしても俺はユリを応援するから。」
「氷室さん・・・」
「ん。・・・まあ、ゆっくり考えなさい。」
「・・・・・はい。」
そう言って彼はまたニュースを見始めた。
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