7650人が本棚に入れています
本棚に追加
私の両親は、東北の田舎の小さな家に二人でひっそりと暮らしています。
この結婚が決まった時、父から言われたことは、『相手のご両親を大事にしろ』ということでした。
自分たちのことは構わなくていい、まずは相手の親を大事に、それが妻を大事にすることにつながると言うのです。
これこそ男の役目だと。
私はそんな両親を誇りに思います。
おやずぃ、おふぐろ・・・俺ぁ、けっぱるからな、いづまでも元気で長生きしてけろちゃ?」
彼のお母さんは、花束を抱えて俯いたまま、涙を拭うことなく泣いていた。
「ここに縁があってお集まりいただきました皆様に、お誓い申し上げます。
私と妻は、これから皆様に認めていただけるよう、誠実に、努力を惜しむことなく歩んでいきたいと思います。
ただ、なにぶん若輩者の二人です。
私たちが道に迷い、困ったり、戸惑った時。
その時は少しだけ立ち止まり、声をかけて、背中を押していただけないでしょうか。
どうか、お願いします。
最後になりましたが、皆さま方のご健康とご多幸をお祈り申し上げ、私の挨拶とさせて頂きます。
本日は誠にありがとうございました。」
彼と深くお辞儀をすると、大きな拍手がおこった。
顔を上げると、みんなの笑顔に混じって、所々で泣いている人もいた。
普段無口な彼。
でもいざとなると、頼れる彼。
スポットライトを浴びて真っ直ぐ前を向き、落ち着いた表情の横顔に、私はまた見とれる。
彼のことが誇らしくて
この人の妻になれたことが
本当に、嬉しかった・・・
最初のコメントを投稿しよう!