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『・・・もしもし。』
「あ、お父さん、ユリです。」
『ああ・・・』
「今日はもう朝から忙しかったから、あまりお話出来なかったでしょう?」
『・・・・・。』
「お父さんに、一言お礼が言いたくて電話したの。」
『・・・・・。』
「無事に今日の日が迎えられたのも、お父さんのお陰です。本当にありがとう。」
『・・・・・。』
「・・・お父さん?」
『・・・・ううっ・・・うっうう』
「お父さ・・・・」
『うう・・・ユリ・・・。』
父の泣き声を、この時初めて聞いた。
びっくりして、私が何も言えないでいると、少し落ち着いた父が「新婚旅行は楽しんでおいで」とだけ言って、電話が切れた。
ツーツーと音がする受話器を持ったまま、私も少しだけ涙がでた。
隣には、酔い潰れてぐっすり寝ている彼。
その寝息さえ愛しく感じる。
長いまつ毛と泣きぼくろを
じっと見つめながら
今日あった全ての出来事に
私は幸せを感じていた。
こうして長い一日が、終わった。
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