はじめての朝

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あなたがいた。 庭に花壇がある家。 緑の葉が繁った、大きな木。 広いリビングに、暖炉に、でも二人掛けのソファ。 それは、彼の部屋にあった、小さなソファ。 あなたに愛を囁かれ あなたの横顔にときめき あなたが私の肩を抱いてまどろんだ、ソファ。 広い家には不似合いの 特別なその場所に あなたがいた。 あなたがいて、私がいて。 笑っている。 声がする。 誰の声なのかわからない。 でもとても愛しい、声。 私は声の主に語り掛け、手を握り、抱き締める。 そんな夢を、みた・・・ 唇にキスを受ける感触がして、目が覚めた。 「おはよう。」 「・・・おはようございます。」 「ごめん、起こしちゃった。」 「ふふっ、今キスした?」 「ん・・・寝顔が可愛くて、我慢出来なかった。」 そう言うと彼は、私の頬を撫でる。 彼の背中に腕をまわす。 しばらくの間言葉もなく見つめ合って、少しずつ唇が近づき、キスをする。 「んっ・・・・・。」 「・・・・・ユリ。」 二人が同じ名前になってから初めてのキスは、その幸せに体が溶けていくようだった。
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