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私はちょっとおどけて、袖を広げポーズをとって見せた。
帯の結び方や、アップにしたヘアスタイルを見てもらいたくて、クルンと体をよじってからまた戻り、彼の反応を確かめる。
彼は目を細めて拳を口にあて、頭から足の先までをしげしげと見ていた。
「ユリを人前に出したくねぇな。」
「はい?」
「家に連れて帰って、しまっておきたいね。」
「ふふ、仕事になりませんよ。」
「他のヤツに見せたくない。」
「・・・・・・・。」
「綺麗だ・・・。」
「着物が?」
「・・・・・・・・・・・俺のユリが。」
優しい眼差しを向ける彼の指は、相変わらず私の頬を撫でている。
「ユリ、俺に掴まりなさい。」
「・・・はい。」
いつもならドアに寄りかかって眠そうにしているのに、珍しく今日の彼は電車に揺られる私の手を頬に触れているのとは逆の手で握ってくれている。
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