穏やかな時間

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氷室さんの婚約者となって1ヶ月が経過しようとしているけれど、未だに彼を私の両親へ紹介できずにいた。 父の都合と彼の休みが合わない為に。 出だしからつまずいている結婚への道は、まだ遠い。これから彼のご両親への挨拶をして、式場を含め諸々を決めて新居をさがし、引越し・・・ プロポーズをうけて浮かれていたのに、結婚の現実はとても大変なものだと、いまさら気付いていた。 焦ってもしょうがないけど・・・ 本当に彼の奥さんになる日がくるのかな・・・ 食器を洗っていると、氷室さんが隣にきた。 布巾を手にすると、何も言わずに洗った食器を拭いて、棚に戻している。 「ありがとうございます。」 「ん・・・あぁ、そういえばね。」 「はい。」 「2月の最初の日曜日に休みがとれた。」 「あ・・・・・・。」 「ユリのご両親に、会いにいくよ・・・正直言うと、今から緊張してる。」 「ふふっ・・・氷室さんなら大丈夫ですよ。」 「そう?」 「特に母なんて、私からの話を聞いただけで気に入っちゃってて『早く会いたい』とばかり言ってます。」 「ははっ、それはありがたいね。」 「・・・いよいよですね。」 「いよいよだ。」 「早く氷室さんの・・・奥さんになりたい。」 「ユリ・・・・・。」 次の日曜日 氷室さんが私の家に、初めて来てくれた。
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