父と母と、そして彼2

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「お邪魔しました。」 氷室さんが帰る時、せっかくの休みなんだから、二人でどこか出掛けてきなさいと母が言ってくれた。二人で並び、両親と向かい合っていた。 「これからは、遠慮なくいつでも来なさい。」 「そうよ、待ってるからね。」 両親は玄関の外まで見送りに出てくれた。 「ありがとうございます。お嬢さんを少しおかりします。」 「じゃ、お父さんお母さん、行ってきます。」 氷室さんは深々と一度頭を下げて、私の一歩先を歩き出した。 両親は見えなくなるまで、笑って手を振っている。彼は時々振り返り、何度も会釈して、はにかんだ笑顔で最後は小さく手を振り返した。それを見ていた母が、とび跳ねて喜んだのが遠目にわかった。 公園の駐車場にとめておいた、氷室さんの車へ乗る。運転席に腰をおろした彼は、深呼吸をした。 「はあぁ。緊張したーっ!!」 その声に肩がビクッとなるほど、驚く私。 「えっ?あれで緊張していたんですか?」 「ん。」 「緊張しているようには、見えませんでしたけど。」 「・・・そりゃあ、緊張するよ。」 「・・・・・・。」 「惚れた女の親に、挨拶に行くんだぞ?気に入って貰えなかったら、アウトでしょ。」 「・・・・・・。」 「はあ、ホッとした。理解してもらえて。」 「そうですね。」 「・・・良いご両親だったな。さすが、ユリを育ててくれた人達だ。」 「・・・・・。」 「緊張したけど、会えて良かった。」 「・・・はい。」 「ユリ・・・・・ありがとう。」 彼がなぜこの時「ありがとう」と言ったのか 何となく、わかるような気がした。
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