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新聞を読み終えた彼は、私の隣に座る。
「今度は、ちゃんと新聞を読めた。」
「・・・ちゃんと?」
「ん。今朝は新聞を読んでも、頭の中に入ってこなかった。マジで緊張してたんだな。」
「え、そんなに?」
「んー。」
「でもそう見えないところが、恐ろしいです。実際は何を考えているのかわからない、ポーカーフェイスですね。」
「そう?今日はユリのことで頭がいっぱいだよ?」
「ふふっ。・・・私は・・・。」
「ん?」
「・・・私はいつも氷室さんで頭がいっぱいです。」
「・・・・・。」
「重い女で、ごめんなさい。」
「・・・ちくしょう。可愛いこと言いやがる。」
肩を抱かれ引き寄せられると、彼の薄い唇がわたしのそれに重なる。柔らかな感触と彼から漂うお日さまの匂いに、しばらく酔いしれた。
「買い物に行くか?」
唇が離れると、急にそんなことを言い出した彼。
「買い物ですか?」
「ん。ユリの服を選ばせて?」
「あ、じゃあ氷室さんの服を私が選びます。」
「いいね。」
「はい。」
二人で笑顔で頷き合った。
「でもその前に・・・・
このまえ言ったこと、覚えてる?」
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