目が離せない

3/3
7610人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
新聞を読み終えた彼は、私の隣に座る。 「今度は、ちゃんと新聞を読めた。」 「・・・ちゃんと?」 「ん。今朝は新聞を読んでも、頭の中に入ってこなかった。マジで緊張してたんだな。」 「え、そんなに?」 「んー。」 「でもそう見えないところが、恐ろしいです。実際は何を考えているのかわからない、ポーカーフェイスですね。」 「そう?今日はユリのことで頭がいっぱいだよ?」 「ふふっ。・・・私は・・・。」 「ん?」 「・・・私はいつも氷室さんで頭がいっぱいです。」 「・・・・・。」 「重い女で、ごめんなさい。」 「・・・ちくしょう。可愛いこと言いやがる。」 肩を抱かれ引き寄せられると、彼の薄い唇がわたしのそれに重なる。柔らかな感触と彼から漂うお日さまの匂いに、しばらく酔いしれた。 「買い物に行くか?」 唇が離れると、急にそんなことを言い出した彼。 「買い物ですか?」 「ん。ユリの服を選ばせて?」 「あ、じゃあ氷室さんの服を私が選びます。」 「いいね。」 「はい。」 二人で笑顔で頷き合った。 「でもその前に・・・・ このまえ言ったこと、覚えてる?」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!