目が離せない3

3/3
7583人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
家の前まで送ってもらい、車を出る。 「氷室さん今日はありがとうございました。」 「ん、お父さんとお母さんに宜しくね。」 「はい。また明日・・・。」 「じゃ。」 彼の車を見送り、振りかえって家に入ろうと歩き出すと、カーポートに父の車と並んでもう1台駐車してあるのに気付いた。 兄の車だ。 隣の市に住む兄は、結婚し奥さんと小学生の男の子と暮らしている。 お正月に一家で遊びに来てくれたけれど、今日兄が来るとは聞いていなくて、不思議に思いながら玄関へ入る。 「ただいまぁ。お兄ちゃん、来てるの?」 昼間、氷室さんと両親が楽しく過ごしたリビングに顔を出すと、兄がソファの真ん中にドカッと座っていて、私と目が合った。 そのただならぬ雰囲気に戸惑って、父と母に目をやると二人ともダイニングにいて、昼間とは全く違う表情をしている。 どうしたのかと立ち尽くしていると、兄が腕組みしながら顎で入ってこいと合図した。 「ユリ、話したいことがある。」 「えっ何?・・・どうしたの?怖い顔をして。」 すると、いきなり大きな声で兄は私にこう言った。 「お前の結婚・・・兄ちゃんは反対だからな!!」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!