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「兄が、氷室さんのことを『いいヤツ』だって言ってました。」
「あれ?たしか、ユリを泣かせるほど俺のことを怒ってたよな?」
「ふふっ、そうですよね。」
「でも・・・光栄です。」
首を少し傾げながら、彼は笑った。
「あれからお寿司の出前を頼んで、食事をしながらあれこれ話したんです。」
「・・・・・ん。」
「4人でじっくり話すなんて、本当に久しぶりでした。」
「それは、良かったね。」
「子供の頃の思い出とか、旅行に行ったときの話とか。」
「・・・・・。」
「私たちの結婚のことも・・・。」
「ん、何だって?」
「楽しみだ、って。」
「・・・・・そう。」
「兄が『オレの家の近くに住め、氷室くんと毎日麻雀するんだ』って酔っぱらって。そのまま寝ちゃったので、今朝自分の家に帰りました。」
「ハハ、嬉しいな。」
「昨日はいっぱい泣いちゃったけど、嬉しいことがたくさんありました。」
「・・・・・ん。」
その時電車がガタンと揺れて、体勢を崩す。
よろけた私の腕を、氷室さんが咄嗟に掴んでくれた。
すぐにその手は離れて、コートのポケットに入れられたけれど、顔を見合わせて笑った。
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