スイッチ

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「旨そうー。」 シチューを盛り付けて彼の前に置くと、顔を近づけて匂いを嗅いでいる。 「氷室さんはシチューにもご飯でしょう?どうぞ。」 「ん、いただきます。・・・・あーうめー。肉が柔らけぇ。」 「ふふっ。氷室さんは何でも美味しそうに食べますね。」 「だってマジで旨いから・・・あ、ユリ、これは何?」 「これ?・・・アボカドですか?」 「食ったことない・・・。」 「え・・・・・。」 「・・・うん、旨い!」 「・・・・・はぁ・・・良かった。」 珍しくおかわりまでして、彼は全て平らげてくれた。 食事のあとは二人でキッチンに立って後片付けをする。 私が洗って、彼がその食器を拭き食器棚へ戻す。一回頼んだこの作業を、彼は毎回必ずやってくれるようになっていた。 料理は全く出来ない彼だけれど、片付けるくらいは、というさりげない優しさが、心地好かった。 食後にコーヒーを淹れてカップに注ぎ、彼の前に置く。 私は持ってきたバックの中から、ガサゴソとバレンタインのチョコレートを出す。 今年は自宅でトリュフを作って持ってきた。 箱に入れて、ラッピングして、ピンクのリボンまで掛けたものを彼のコーヒーの隣へ置く。
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