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父と母はお見合い結婚で、見合いした日の、次に二人が会ったのは結婚式当日だったそうだ。
『自分の子供には恐くてそんなことされられない』と以前母は言っていたが、そうとは思えないくらい仲が良い夫婦で、私の自慢の両親なのだ。
実際、母の口癖は『お母さんはお父さんと結婚できて、宝くじの1等に当たったようなもの。』だった。
実直で寡黙な夫と、少々かかあ天下で朗らかな妻。
このバランスのよい両親の愛情が、今の私の幸せを導いてくれたのだ。
「お父さん、氷室さんはとても優しくて良い人です。一度会ってくれないかな。」
「・・・・・そうだなぁ。」
「私はまだ22歳で、結婚には早いのかも知れないけれど、真剣に二人で考えてるの。・・・お願いします。」
「・・・・・・ユリ。」
「はい。」
「父さん・・・会わなくてもいいんだけど・・・。」
「えっ。・・・・お父さん!」
「ああ、ごめん。・・・そういう意味じゃないよ。」
「・・・・・・・?」
「会わなくても・・・ユリが良い人だと言うなら間違いない。・・・・絶対、間違いないよ・・・。」
「お父さん・・・。」
父は、俯いたまま何度も何度も頷いた。
その隣で母は、満面の笑みで私に手を伸ばし、良かったねと云わんばかりに背中をさすってくれた。
やっぱりそうだ・・・
お父さんもお母さんも、私を信頼してくれているんだ・・・
そうやって育ててもらったからこそ、私は氷室さんを信頼し、ついていくと決められたんだ・・・
私は両親の前で、涙を堪えきれずにいた。
父は、それでも黙って頷いて
母は、笑って私の背中をさすった。
父と母の元に生まれたことを
私は心から、感謝した。
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