スイッチ3

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彼が、いつものように車で私の家まで送ってくれる。 2月の夜空は澄んでいて、まだ街は明るい時間なのに星が綺麗に見えた。 「ユリ、バレンタインのチョコ、ありがとう。」 「ふふ、どういたしまして。」 「夕飯に食ったシチューも旨かった。」 「あ、嬉しい。」 「ユリは、どんな料理でも作るんだな。」 「・・・簡単なものばかりですよ?」 「お母さんの手伝いをして覚えたの?」 「あぁ、うちの母は体が弱くて・・・今はすっかり元気になりましたけど、私が小さい頃はよく入院をしていたんです。だから必然的に。」 「へぇ、そうなんだ・・・。」 「父も兄も料理は上手ですよ?兄の得意料理はカルボナーラです。」 「あ、あの牛乳系の・・・。」 「ふふっ。氷室さんは嫌いですものね。」 「・・・『氷室さん』?」 「あっ・・・・洋一さん・・・。」 「ん、ヨシヨシ。」 「はずかしー・・・。」 両手で顔を覆って、俯く私。彼は声を出して笑い、赤信号になり停車したタイミングで私の手をとり、指を絡めた。 「・・・・・・ユリ?」 「・・・?」 「お母さん・・・元気になってよかったな。」 「・・・・・・。」 「ん・・・ほんと、良かった・・・。」 「・・・・・はい。」 私の母を「お母さん」と呼び、体の心配をしてくれる。 ただそれだけで嬉しい。 彼が身近な存在になればなるほどこんなに嬉しいなんて・・・ 公園の駐車場へ車を停め、彼が助手席の後ろに手を掛けて私に今日最後のキスをする。 唇を離すと、至近距離で見つめ合った。 「おやすみ、ユリ。」 「おやすみなさい・・・洋一さん。」 「・・・・・それ・・・ヤバいな。」 私はそれを聞いて、頬をゆるめながら車を降りると、彼は左手を少しあげて合図をし、帰っていった。 今年のバレンタインも私の手作りチョコを 洋一さんは、喜んでくれた。
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