すれ違い

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「ナオミちゃん。今日は、私ダメなの。」 「何があったのさ。」 「今日の社員教育での話なんだけど・・・」 「ふんふん。」 「外部から講師をお願いして、来てもらったのね?」 「あー、そうだったねぇ。」 「その外部講師の、名前を間違えて紹介しちゃったの。」 「えーー。そりゃマズイわさ。」 「そうなの。その方は笑って許してくれたんだけど・・・」 「杉山課長に怒られたー、と。」 「そう・・・ナオミちゃん。私、なんでこんなミスをしちゃったんだろ・・・今日はホントに、私ダメ。」 「わわわっ、そんな落ち込まないでー。」 「ありがと。でも・・泣きそう・・」 ナオミちゃんは私の背中を撫でて、慰めてくれた。 「そんな日にはやけ酒でも!と、言いたいところだけどさ・・・。」 「あれ?ナオミちゃん、今日はダメなの?」 「ゴメンね、ユリちゃん。先約がさ。」 「そう、わかった・・・聞いてくれてありがとう、ナオミちゃん。」 「あー、アタシもう行かなきゃ。ユリちゃん、過ぎたことは気にしないの!ハゲるからねっ!」 「・・・うん。」 「じゃあねっ!」 手を振ってナオミちゃんは、カフェスペースを出ていった。私は、精一杯の笑顔をつくって彼女を見送った。 少し休憩して自分のデスクへ戻る。 いつまでも失敗を引きずる訳にはいかない。月末には新卒社員の合宿研修がひかえていて、落ち込んでいる暇などないと知っていた。 だからひたすらパソコンに向かい、仕事を続けた。
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