電話の声

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彼の、心からの言葉だと思った。 上部だけ良く思われるのではなく、もっと深い意味で認めてもらいたいのだ。 両親と私の強い絆を感じ取って、自分の側に私を連れてきてしまう後ろめたさを、どうやって埋めれば良いのか真剣に考えてくれている。 彼は、私にとって充分すぎる人だ。 十代で故郷を離れ、学業に専念する傍らバイトをして家計を助けた。 引っ越しから役所の手続き、奨学金の申請に至るまで、自分で出来ることは全て、年老いた親に代わり自らやっていたという。 大学卒業後、一部上場の企業に就職して自立し、会社の花形である外商に配属され、半期に一度の表彰で名前があがるほどの成績をのこしている。 人から見たらエリートだが、その実は何事にも実直に向き合い、無駄なことは言わず、まさに『努力の人』だ。 本当に私には、充分すぎる人なのだ。 しかし彼は、もっと努力をして、私を両親から拐ってしまうことさえも覆すほどの男でありたいと、願ってくれている。 私が信じ 添い遂げたいと思う人は そういう人なのだ・・・・・
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