7577人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
兄の怒りと愛情
「ユリ、話したいことがある。
お前の結婚・・・兄ちゃんは反対だからな!」
家に帰った私を待っていたのは、昼間とは全く違う表情をした両親と、腕を組んで怒りだした兄だった。
いきなり結婚に反対と言い出した兄の真意がわからずに、茫然とする。
「え・・・・お兄ちゃん。」
視線をさまよわせ、すがるように両親を見る。
父と母はダイニングテーブルに向かい合って座り、父は俯いていたが、母は兄と同じように怒った顔をしている。
言い知れない不安が、胸の中から溢れてきた。
氷室さんが家に来て両親へ彼を紹介し、久しぶりのデートも出来て、幸せな1日になるはずだったのに。
急に奈落の底へ突き落とされた。
この結婚は、皆に祝福されるものと疑わなかった私は、自分の浅はかさを悔いていた。
「お兄ちゃん・・・どうして?」
「ユリと結婚したいというヤツ、今日はウチに何をしに来たんだよ。」
「何って、挨拶に・・・・」
「バカ言うなっ!!」
「・・・・・。」
大きな声に驚いて、体が震え始める。
「そいつ、外商の係員らしいな?」
「え・・・う、うん。」
「どうせチャラチャラしたやつなんだろ。お前も言ってたじゃないか。外商は派手な人が多いって・・・。なんでそんな男に騙されるんだよ。」
「・・・あの、それは誤解で・・。」
「第一、ユリはまだ22歳だぞ。早すぎる。・・・もっとちゃんと考えろ!」
「・・・・お兄ちゃん、聞いて・・・。」
最初のコメントを投稿しよう!