3-32

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トトの乗る地竜によじ登り、彼女の前までやって来た。 途中地竜が暴れないか心配だったけれど、こっちの地竜も大人しく我関せずと前を向いている。 やがて向かい合う私とトト。 けれど彼女はなおも泣きっぱなしで。 ここまで泣かれると流石に罰が悪い。悪すぎる。 「えっと……ちょっと言いすぎたかも。トト、ごめん」 ぽりぽり頬を掻きながら、俯き加減で謝罪する私。 トトは私の言葉にしゃくり上げ、やっと大声を上げるのを止めてくれた。 「うっぐ……うえっぐ……シーナ、ウチのこともう嫌い?」 「ふぇっ!?」 急に上目遣いで可愛らしく来られるものだからだいぶ調子が狂ってしまう。 変な声、出ちゃうし。 何この子、ほんとにトトなの? 「えっと……嫌い……じゃない」 「じゃあ好き?」 なんでこんなラブコメみたいなセリフ言い合ってんのっ、とすごおく思ったけれど。別にこういう汐らしいトトはそれはそれで可愛いからオッケーとならなくもない。 むしろこっちのトトの方が好感が持てる。質問の仕方はちょっぴりストーカーじみてて怖いかもだけど。 「……うん、まあ、好き……かも」 「えっ!? ほんとぴょんっ!? ウチ、てっきり嫌われてると思ってたぴょんっ!」 「わっ!? ちょっ……」 そう言い急に私の背中に手を回し抱きついてくるトト。 これには私も参った。 てかこれキャラ変わりすぎじゃないだろうか? 「じゃあっ! これからシーナのこと、シーナぴょんて呼んでもいいぴょん!?」 「ええ~……そ、それは……、ま、まあ、いいけど……」 「やったぴょんっ! シーナぴょん! ごめんなさいぴょん! これから仲良くしてぴょんっ!」 そう言いつつぎゅうぎゅうと抱きしめられた。 その力の強さに私はかなりたじろぎつつも、パトルノが昼間、トトは私のことが好きだと言っていたのを思い出していた。 ちらとパトルノの方を見ると、彼女は私にサムズアップを決めてウインク1つ。 その表情はなんだか得意気で。良かったですねっ、シーナさんとでも言いたげだ。 う~ん、良かったんだろーか。 まあでも事あるごとにサマーソルトキックぶちかまされるよりはいいのかなあと、私は諦めにも似た境地に至る。 「なんか今までと嬢ちゃんの雰囲気が違うねえ」 そんな一部始終を見ていたレイノールさんが妙にふむふむと関心した様子で呟いた。 「――あれ? あなたたちは……」 レイノールさんの発言にようやく二人の存在に気づくパトルノ。今さらですか!? けれども今はその話は措いておきたいところだ。 「あ~、話は後よ。とりあえず皆一度合流しましょう?」 ここに至るまで、思ったよりも時間を食ってしまった。 私はごちゃごちゃここで説明するよりもまずは皆で落ち合うことを優先するべきかなあと思ったのだ。 どのみち合流したらそこでもハルやユーノ、工藤くんにアーバンさんたちのことを説明しなければならなくなるのだ。 それならば全員揃ってから一度に成り行きを話す方が効率的だ。 それにカサンドラの地竜はこんなところまで気が動転した状態で駆けてきたのだ。 そのことから察するに、町で何かあった可能性が高い。 まだ休み足りない人もいるかもしれないけれど、このままカサンドラに向かった方が絶対にいいと思うのだ。 「あ、はい……それもそうですね」 「分かったぴょん! シーナぴょんっ! ついていくぴょんっ! うふっ! うふふっ!」 いや、トト変わりすぎでしょ……。 私はトトの変貌ぶりにたじろぎつつ、それでも否定されるよりは全然いいとも思う。 パトルノも私の意向を察してか、頷き肯定を示してくれた。 「あ、それでさ」 私は気を取り直し、すっかり大人しくなった地竜の足元へと移動してパトルノを見た。 「はい?」 「地竜の背中って私とかも乗っちゃってもいいわけ?」 せっかくならばパトルノやトトと同じように地竜の背中に乗って移動したい。というかそうできなければけっこうめんどくさいのよね。 地竜のスピードに私たちが合わせるか。私たちの速度に地竜を合わせるかということになる。 図体が大きいだけあって絶対地竜が走るに任せる方が速いと思うのだ。霧もまだそれなりに出ているのだし。 とごちゃごちゃ胸の中でゴチつつ――。 結局は単純に竜の背中というものに興味があるのだ。 理由としてはこれが一番大きいです、はい。 「ふふふ……シーナさん。いいですよ? 是非乗ってみてください」 パトルノは私の顔を眺めると、そう言い花のように微笑んで手招きしてくれた。 「――そうこなくっちゃっ!」 私もそれにニカリと笑んでサムズアップを返すのだった。
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