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「え、ちょ、待ってください、理解が……。つまりあなたは、源義経のカッコをした、源氏ファンのコスプレイヤーさん?でもここ、京都の公園ですよ?イベント会場じゃないですし、渋谷でも池袋でもありませんよ?」
子どもがたむろする京都の一公園にそんな華美な格好をして来て、見世物にでもなりたいのだろうか。萌黄は今一度、自称源義経を頭のてっぺんから足の爪先までを、なめるように眺めた。
コスプレイヤー……だとすれば、かなり衣装や小物に金をかけている。見ればもはや明白であった。
源家の家紋を染め抜き立涌模様をあしらった薄手の彩衣をまとい、対照的に上には襤褸をつなぎ合わせたような羽織を着ている。そして腰には金の派手な拵えが目につく短刀・今剣と、暗色の渋い拵えが美しい太刀・薄緑が差してある。
本格的すぎ……、萌黄は心の中で呟いた。
「こすぷれいやあ?なにそれ?俺は俺だし、キミさぁ、観てたじゃん。朝の特集。俺、今日蘇るんだよ」
またしても度肝を抜くような爆弾発言をサラッとかましてくる。萌黄は目を見開いて、あからさまに相手との十分な距離を確保するために、ずずずっと後ずさった。
「なんで私の観てた番組とか知ってるんですか!ストーカーですか?怖い!!」
自称義経は面倒くさそうにぴーぴーわめく萌黄の口を問答無用で手で塞ぐと、互いの息遣いがもろに伝わるくらいまで顔を近づけて、幼子を諭すように言った。
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