ワガママ御曹司との出逢い

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「え、待っ、ここ平安じゃないですよ?てかそれ真剣!?銃刀法違反で捕まりますし、子供を殺すのはさすがにダメですよ、可哀想!」 芝生の広場でキャッチボールをするぷくぷくとした坊主頭の少年。小学3年生くらいだろうか。自称・義経はその子供に近づくと、萌黄の静止する声など聞かず太刀を天高く振り上げた。 そして、煌めく一閃は間違いなく坊主頭の少年に振り下ろされたーー……が、状況は何一つとして変化していなかった。 鮮血が飛沫となって舞うでもなく、首が鳥のように天高く跳ね飛ぶわけでもなく、少年は可愛らしいぷくぷく姿のまま、「あーーッ、どこ投げてんだよ!お前お詫びにカラアゲ10個寄越せよ」と言って、おかしな方向に投げられたボールをトコトコと拾いに駆けて行った。 「ふおっ?」 それを見ていた萌黄は思わず素っ頓狂な声を上げる。 どうして少年は無事なのか? あれは絶対に年季の入った真剣だった。模造刀は鑑賞用として作られたものだから振り回せない。仮に真剣ではなく居合刀であったとしても、あそこまで本気で振り抜けば無事ではいられないはずだ。 「わかっただろ?俺は他の奴に見えてないし、俺は他の奴を触れることもできない。だから、こすぷれいやあなんかじゃねえ。れっきとした故人で、武士だ。てかそれ以上に俺、源義経だし」 刀を納刀して、涼やかに彼は言った。     
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