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「さあ、では次にこちらをご覧ください。こちらは義経公が自害されたお堂の近くに建てられた碑です。多くの文献によりますと、義経公は自害する前に一人の家臣にこう言ったと伝えられています。『我、たとへ此処で死しても必ずや再び日ノ本に降り立たん。』古びていて見にくいかもしれませんが、こちらの碑にはその言葉が刻まれているんです。
そしてなんと近頃、義経公ゆかりの地で何やら異変が起きていると言います。まず、義経公の所持していた愛用の横笛と、自害した際に使ったとされる短刀・今剣の所在がわからなくなったのだそうです。警察は盗難の可能性を視野に捜査を進めていますが、防犯カメラの映像などには何も映っておらず、その他義経公を祀った神社に人魂が現れたり、御神体が少し動いていたりと、超常現象的な出来事が絶えないといいます。一部の義経ファンの間では、義経公復活の兆しに違いないとの噂が絶えずーー…」
息をするのを忘れていた代わりに、萌黄の眠気は完全に吹っ飛んだ。
源義経。漢字にしてたった3文字のその人名が、高校2年生・齢17の萌黄にとって何よりのエナジー剤なのである。
「よし、よっ、よよよよよしつつつっっねさま!!」
ろくに呂律も回っていないのも構わず、萌黄はとにかく叫ぶ。よしつねさまぁぁおうぁあぁあああ、天にでも届けさせたいのかと疑うほど、声高にその名を咆哮させ続けた。
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