第三章 誰よりも君を

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 彼の予感は残念ながら的中していたようだ。男は片言の日本語で怒鳴り、ジャンパーのポケットから出した刃物を見せ、すぐに翔を脅して現金を要求し始めたのだ。 「…………翔!!」  抵抗すれば、彼の命が危ない。輝也はさきほどの躊躇も忘れ、無我夢中で店内へと駆け込んでいた。 「て……輝也さん!来ないで!!」  飛び込んできた輝也に気づいた翔の叫びを聞きながら、彼はスーツの上着を咄嗟に脱ぎ、それを手にして振り回し、男ともみ合いになる。  翔はその隙に慌ててコンビニのレジカウンターの横にある、防犯非常ベルのスイッチを押した。ここから最短距離の警察署に緊急連絡が入るはずだ。 「コノヤロー!!翔に手を出すな!!」  輝也は男の腹を蹴り上げる。男はそれでも果敢に彼を振りきり、翔にレジを開けさせるように刃物を振り上げた。 「くそっ!やめろっ!!どけっ!」  男の腕を掴み、輝也が再び男の懐に飛び込もうとしたそのとき!! 「………………!!」  惨劇はスローモーションのように翔の眼のなかに飛び込んできた。振り下ろされた刃物は、まともに輝也の防御しようとした、左腕を切り裂いていたのだった。
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