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「輝也さん…」
ふと沈黙を破ったのは翔の方だった。
「何?」
特別な頼みごとでもあるのではないか、と輝也はなんとなく感じた。
「………その……」
「どうしたの?いい難いこと?」
翔は聞かれてすぐにコクリと頷きながらも、首を横に慌てて振って否定する。
「ははは…なんだよ、翔、ヘンだよ」
「……はい。そうかも……だけど」
ふっ……と息を整え、翔はやっと決心でもしたように輝也に向き合った。
「……輝也さん、僕と……結婚してください」
「え?」
あまりに突然のことで、輝也は言葉を失い、目を丸くしている。だが、それは一瞬の思いがけない言葉に驚いただけであり、本質的には翔と自分の気持ちは同じだった。
「うわぁ……先にプロポーズされた。やられた!!」
輝也はちょっと口惜しそうに見える。本当は自分から、そして翔が自分にもっと信頼を寄せてくれるようになってから…とタイミングを測っていたのだから。
「あ、あの…僕みたいに取り得も資産価値もない人間ですが、僕…この先ずっと輝也さんの傍にいたい。いや、いさせて下さい。本当は結婚とか形にこだわらなくてもいいかな、って思ったし、今の日本じゃ同性は婚姻関係は認められないかもしれないけど…僕、輝也さんに認めてもらえたら…ずっと傍にいられるんじゃないかって…あの…その」
「……参ったなぁ。いつからそう思ってくれていたの?」
翔は顔を真っ赤にさせたまま、“付き合い始めてすぐ位”と答えた。
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