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「……………。」
「で、…彼に会ったんですか?傷つけたと思うのであれば、ちゃんと謝ったほうがいいですよ」
「はぁ…。だよな」
「まぁ、それは当然ですが、ボク個人とすれば…」
「………?」
「ボクだったら、仮に赤の他人でどうでもいい人にだったら、敢て自分の辛い過去を明かす気にはならないですね…。彼は…先輩に知って欲しかったんじゃないのでしょうか?」
「………………」
***********
仕事帰り、間もなく深夜になろうとしていた頃、輝也はふらりと翔が勤めるコンビニに寄り、外から店内を覗いていた。
今日は遅い勤務なのだろう。レジでいつものように客に応対している翔が見える。すぐ目の前の光景のなかに、自分は今そこへ入っていく勇気がない。
翔の過去を抉り出したことで、彼に嫌われてしまっているとしたら、何故か想像を絶するような胸の痛みを感じてしまう。まるで自分は極悪人ではないか。そう思うとどうしても入店を逡巡せずにはいられない。
「?」
そんな時だった。店に入ることを躊躇っている彼の後ろを通り、ふいにフルフェイスのヘルメットを被ったままの男が一人、コンビニの店内の最後の客とすれ違いにドカドカと入っていった。
すぐに輝也は嫌な予感に襲われる。
(…………まさか?)
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