第二章 距離

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(なんだかこれって……ホントに子供みたいですよ、先輩。)  そんな風に思わず声に出しそうになりながら山崎は笑った。 「……山崎、オレ、さっそくコンビニ行ってくるわ」 「え?買い物?」  虫かごと採集網でも持って家を飛び出す子供のように、輝也は小走りでオフィスを突然出て行ったのだった。 *********************  輝也のオフィスから2-3分の場所に、“彼”が働いているコンビニがある。 「今日は細かい小銭も持ってるわけだし、文句ないよな」  コンビニの入り口を足取り軽く入っていくと、商品管理をペンタブレットでチェックする、翔の姿があった。 「翔!」  何故か先日から呼び捨ての輝也。そんな彼の姿に気付くと、翔は微笑んだ。 「こんにちは、輝也さん」 「通りがかったから、買い物に寄ったよ。ちゃんと小銭持ってきたし」  世間一般のごく常識を、さも得意げになって財布を開けて見せる輝也に翔は可笑しそうに笑う。 「………ホント、第一印象とは雲泥の差ですね、輝也さんって」 「カンベンしてくれ。オレってそんなに酷いヤツに見えた?」 「いえ…なんかもっと、ずっとずっと大人の男性に見えました」  頬を染めて微笑む翔に、思わず輝也は照れくさくなる。 (何、これ?) (なんで、オレ、こんなに照れて恥ずかしい気分になるわけ?)
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