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 死期が近い人の中にはね、自分の手をじっと見つめる人がいるんだって。  知ってる?  掌とか、手の甲とかをね、毎日、毎日、じーっと見てるんだって。    何でそう言う事をするのかは分かってないの。  でね、その話を聞いたある旦那さんが悪いこと考えたんだ。  毎日掌をじーっと見させることができれば、人を殺せるんじゃないかって。  まさかって思うでしょ? その人も、思いついたはいいけど半信半疑だったの。  だからこそ、気軽に試しちゃったんだよね。  その人、浮気しててね、奥さんが邪魔だったんだって。  で、奥さんにね、毎日言ったの。  お前、なんか手が変じゃないか?  最初の内は奥さんも真に受けなかったんだけど、毎日言われるもんだからそのうち気になってきてね。  どこが変なのか確かめようと思って、毎日毎日手を見るようになったんだって。  そしたらね、奥さんほんとに死んじゃったの。  あっという間に窶れちゃって、ベッドから動けなくなっても、毎日手を見てたんだって。  で、旦那さんもさすがに怖くなって、奥さんに変じゃないよ、ごめんなって謝ったの。  でも、もう奥さん手遅れだったのよ。  死ぬ前の日にね、奥さんは旦那さんの手を握りたいって言ったの。  旦那さんが手を差し出すとね、奥さんはその手を自分の頬にペタッと当ててね、こう言ったの。  私、この手が好きよって。  だから、自分の手を見たら私を思い出してねって。  そう言ったの。  
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