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Prologue:戸惑う「城」と日常の「僧侶」
「蒼焔、この間の検査結果出たわよ。この量のロヒノプールとあの中国酒なら普通は一口で倒れてる…
全く『Seabule Lynx』も随分な手を使うわね。まあ、身体に異常はないから安心していいわ」
そう言ってあたしの部屋に入ってきたのは、『Black Gemini』の医療班を束ねる「Rook」と呼ばれる女性だった。検査結果の紙をあたしに見せながら呆れて呟いている。
『あたしには効かないのを知らないんだから仕方ないでしょ…それに彼等とは共闘する事になったんだし。でも紅花は変わってなかったよ』
「そう…でもあの水蓮がまさか紅花の姉妹弟子だったとはね。どうするつもり?」
『分からない…一度蓬莱にも逢いたいと思ってるんだけど、もういない感じがするんだよね』
「蓬莱がいないって、どういう事?」
『たぶん死んでる可能性があるって事。一応その辺はウルフに調べてもらってる』
「蓬莱が死んでる?そんな噂は聞いてないわよ?」
『死んでいないにしても何処にいるのか分かってないからね』
検査結果を見ながらあたしは呟く。蓬莱の事は『Seabule Lynx』からは何も聞いていない。
もしかしたら死んでいるかもしれないし、生きていても表舞台から引退している可能性もある。
窓の外は鈍色の空模様が見えた。
『Rook、もし蓬莱が生きてたとしたら…紅花と水蓮、どちらを後継者に選んだんだろうね』
「多分紅花じゃないかな?だって水蓮は掟に背いて蓬莱のもとを去ったんでしょ?」
『そうなんだけどね…それがなかったらどっちが蓬莱の後を継いだのかなって思ってね』
「紅花に逢ったんでしょ?元気だった?」
『相変わらずだよ。彼女はいつでも強気だし、薬を仕掛けた時も慣れた手つきだったさ』
そう言いながら鏡を見ると、鏡の向こうには翠の瞳のあたしがいた…
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