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(あなたも、パパの勇姿見たいもんね?)
早雪はお腹の中にいる子どもに話し掛けながら、何とか会場に着いた。
会場には夏休みだからなのか、平日だというのにたくさんの人がいた。
この会場に居る人全てが、隆也の写真を見に来たのかと思うと泣きそうになる。
早雪は用意した前売券を係員に見せると、会場の中へ入っていく。
「・・・わぁ、懐かしい」
入るなりいきなり早雪を出迎えたのは、懐かしい宮島の朝焼けの写真だった。
この写真を撮るために早雪は隆也にモーニングコールをして、なんとか起こした日のことを思い出す。
写真展を進んでいくと、早雪と出会ってから撮った写真、出会う前に撮った写真、様々な写真が散りばめられていた。
全てに水彩画のような美しさがあり、隆也の純粋な人柄が滲み出ている。
まるで隆也の人生そのものを表している、そんな写真展のように感じた。
(こんなにすごいことができる人が旦那さんなんて、私は幸せだな)
早雪は感動を噛み締めて、写真展を進んでいく。
そして、最後の一枚の前で固まってしまった。
「この写真・・・」
驚きと嬉しさで、早雪は静かに涙を流した。
その写真は、隆也が最後に宮島で撮影した、早雪の写真だった。
雪の葉のキッチンで、料理をしながら隆也に微笑む早雪。
自分は隆也の目にこんな風に映っているんだと、初めて知った。
早雪が写真の前で感動していると、一組の手を繋いだカップルが、早雪の写真の前で足を止めた。
「これ、すごく綺麗な人・・・」
カップルの女の子は、そう言うと早雪の写真をマジマジと見つめる。
早雪は急に恥ずかしくなって、カップルの後ろに回って、小さくなりながら様子を伺った。
「水神さんは、きっとこの人のこと愛してるんでしょうね」
感動する女の子に対して、男の子はそう呟いた。
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