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「あ!写真集!私、そのスーパースターに、水神さんの写真集あげた!」
「早雪さん、それ、水神さんに言った方がいいんじゃないですか?」
「え?!なんで?」
「スーパースターに認められたって教えてあげたら、水神さん嬉しいじゃないですか。あとは、連絡する良い口実になります」
「でも・・・今更、連絡するのもねぇ?忙しいかも知れないし・・・東京の彼女がいるかも知れないし、迷惑じゃない?」
「素直に連絡して傷付くのが怖いって言ったらどうですか」
「・・・うっ、図星すぎて何も言えない」
「でも冗談抜きで、写真集あげた話はした方が良いと思います。もしかしたら、水神さんのチャンスに繋がるかも知れないし」
「そっか、チャンスか・・・」
帰り際、萌にもう一度隆也に連絡をするように念を押されたが、早雪は携帯を前にしてずっと電話すべきかどうか悩んでいた。
隆也の番号を表示したまま、ずっとボタンが押せない。
どうやって話を切り出せば良いのだろうか。
電話して迷惑じゃないだろうか。
冷たくされたらどうしよう。
でも、やっぱり声は聴きたい。
元気かどうか知りたい。
・・・出来ればもう一度会いたい。
色々な思考がぐるぐるしてしまい、何度もボタンを押す手を止めてしまう。
電話一本かけるのに、こんなに勇気がいるなんて思いもしなかった。
「・・・ダメだぁ!やっぱり無理!」
最終的には傷付くのが怖いという想いが勝ってしまい、早雪は電話をかけるのを辞めてしまった。
しかし携帯を握り締めたまま、暫く途方に暮れていると、
ブー、ブー、ブー。
携帯のバイブが震えた。
こんな時間に電話をしてくるのは、おそらく萌か達夫だ。
そう思って早雪は、握り締めた携帯の画面を見た。
「え?!どうしよう!どうしよう!」
しかし画面に表示されていたのは、萌でも達夫でもなく、今まさに電話をかけようとした相手からだった。
早雪は酷く慌てて、なかなか通話ボタンを押すことが出来ない。でもまた自分から折り返すことを考えると、今出てしまった方が良いと判断し、精一杯の勇気を振り絞って通話ボタンを押した。
「・・・もしもし」
「お久しぶりです、早雪さん。水神です」
久しぶりに聴く隆也の低い声は、心地よく響いて、一言で早雪の胸をいっぱいにした。
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