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「え?どうして?」
「感じませんか?写真から被写体に対しての愛情が」
「うん、確かにそうかも。大事っていうのが伝わってくる。あと、彼女も水神さんのこと好きなんだなって感じる。だから、こんなに自然に柔らかく笑えるんだよ。これは好きな人にしか見せない表情じゃないかな」
女の子が真剣にそう言うと、
「確かに、彼女のこの表情は、愛に溢れていますね。なんか素敵ですね。写真から二人の信頼関係と愛が伝わってくるなんて」
「本当にそうだね。こんなカップルになれたら素敵だよね」
「そうですね」
二人はそう話しながら、繋いでいた手をさらに強く握っていた。男の子の方が敬語を使っているので、おろらく後輩なのだろう。初々しい二人に、早雪も胸が熱くなる。
「こんなカップルになれたら素敵」
若い子からそんな風に言われるなんて。早雪は嬉しいような、くすぐったいような、何とも言えない気持ちになる。
そして大学生ぐらいの二人を見ながら、早雪はふと自分が大学の頃を思い出す。
早雪もこの二人のように、葉とよく手を繋いで出掛けていた。
(あなた達はどうか、ずっと一緒に仲良く、幸せにいられますように・・・)
二人の様子を後ろで眺めながら、早雪はそっと偶然居合わせたカップルの幸せを祈った。
素敵なカップルに会えたし、隆也の人生も世界観も改めて感じられたので、早雪は無理をして来て本当によかったと思った。
幸せな気持ちで、家に帰ろうとすると、
「え?!早雪?!なんで、ここにいるんだよ?」
たまたま様子を見に来ていた隆也に鉢合わせをしてしまう。
隆也の周りには、偉そうなスーツを着た男性が数名いた。しかし隆也はその人達を置き去りにして、早雪のもとへ走ってくる。
「危ないから来ちゃダメだって言っただろ?」
「だって、やっぱりどうしても見たくて・・・」
「何かあったらどうするんだよ・・・」
「ちょっとなら大丈夫かなって思ったの。本当にごめんなさい。・・・でも来てよかったよ?素敵なものたくさん見れた。これで元気な赤ちゃん、産めるよ?」
早雪が申し訳なさそうに笑いながら言うと、隆也も、
「しょうがないなぁ・・・」
と、苦笑いをした。
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