ことのはじまり

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「12時34分。彼は駅前のマスバーガーで、季節限定マスフライタルタルバーガーセットを購入。昼時でほぼ満席。窓際のカウンター席が空いているのを見つけ、そこで昼食を摂ります。最初は揚げたてポテトフライを1口。熱すぎて舌を火傷した良太さんは、慌てて注文したセットドリンクに口をつけますが、飲み物を吹き出し、トレイを汚します。彼は熱々のホットコーヒーを頼んでいたことを失念していたんですね。我が主ながら、情けないです」  13時14分。昼食を済ませた良太は、駅に隣接する商業ビルへ足を運ぶ。  13時24分。本屋へ到着。女性グラビアの巻頭写真に惹かれるものの、手を引っ込め、男性向けファッション誌を立ち読みする。  13時46分。全品20パーセントオフの表示に誘われて、秋物の上着を物色。美人の店員に新作の1万2000円のジャケットを買わされそうになるが、何とか断り退店する。 「三森さんの方が鼻が高い。三森さんの方が肌のツヤが良い。三森さんの方が……」と、憧れの女性を脳内に浮かべ、美人の店員とジャケットへの未練を打ち切る。我が主ながら、煩悩だらけで嘆かわしい。
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